
公報SDI調査は、手柄にならない負担業務
▼筆者はもともと医薬品メーカーに所属していました。新規有効成分を研究開発している医薬品メーカーは、開発ステージが上がるタイミングで新規有効成分候補化合物を潤沢な研究開発費を持つ他の製薬メーカーにバイアウトするケースがしばしばあります。その時点で当該化合物の特許出願は審査中であることが多く、また、将来競合したり利用関係になったりしうる他社の化合物に関する特許出願もどんどん出てくるため、公報SDI調査を行い、バイアウトの交渉で提示するニーズがあります。そのような事情から、新規有効成分については、公報SDI調査はしっかり行われていました。▼一方、有効成分が新規ではなく、剤形や用法・用量の変更、ドラッグストアで販売される医薬品の領域では、公報SDI調査を行うインセンティブが弱く、うまく運用されにくいのが実情でした。▼その背景には、義務的性格が色濃い業務であり、頑張っても手柄になることはないという構造的な問題があると思われます。例えば地震であれば、必ずまた起こるし、何年以内に何パーセント以上の確率で起こる、と言って危機感の共有が図られています。それに対して、他社の特許に関してはそのような見通しを立てることが難しく、リスクに対する危機感も共有しにくいです。そうすると、それより優先しなければならないタスクはいくらでもあり、優先順位がずっと低いままで後回しになってしまうという状況に陥りがちです。▼優先度が低い負担業務を薄く広く分配するために、知財部内または研究者・技術者の間で分担する運用がされている会社様は、製薬会社に限ったことではなく、少なからず存在するのではないでしょうか。
研究者・技術者にとって、公報SDI調査をすることは有益でしょうか?
▼実際のところ、研究者・技術者にとって、自社の事業や自分の研究テーマとの関係性というフィルターをかけると特許公報は玉石混淆です。また、そもそも技術内容を読み手にわかりやすく伝えようという意図で書かれていないものが大半ですし、技術的範囲や補正を意識した他の文書ではみられない記載ぶりになっていて学術論文や技報とはかなり異なるため、研究者・技術者にとっては馴染みにくいものです。選別されていない公報群を通覧することが知識・技術の習得のため効率がよいとはいえません。優先順位が低い作業で後回しになりがちになるのも当然と思われます。▼問題は、公報SDI調査の作業が後回しになりがちで滞貨が生じてしまうほかにもあります。負担を減らしたくて、処理する特許集合の件数を少なく抑えるため公報SDIの検索式が必要以上に絞り込まれたものにされたり、労力を軽くするため情報整理・管理がおざなりになったり、といういわゆる手抜きが生じ兼ねません。▼それだけではありません。多くの人が判別に携われば、判断基準のばらつきが大きくなります。それを正すためには他者によるダブルチェックが必要になり、ばらつきが大きいほど手間もかかります。仮にダブルチェックを省略すれば、漏れや脱落に気づかず、大事なときの判断材料として不十分なものになってしまいます。
しっかりやれば、大きな利益をもたらす公報SDI調査
▼もし、公報SDI調査をしっかり行っておけば、新製品開発などのアクションを始めるにあたり、障害となりそうな他社特許を予め知っておくことができ、不安や迷いが激減します。複数部署が絡む大きなプロジェクトについて、だいぶ進んだ段階で設計変更等の方針転換を求めなければならないというつらい状況を回避できます。▼また、効果的に対比したり、見直して確認を反復したりできるシステムを用いて管理することで、数十件、数百件の特許に関する知識、記憶が有機的に繋がり、「自社が事業をしている技術分野の事情通」となります。複数人がアクセスできるような環境があれば、そのような事情通が増えていくことも期待できます。

ツールとサービスをダブル外注すれば、公報SDI調査の不具合はうまく解決
▼当社では、ウォッチング情報の管理ツールとしてウォッチネットTMを提供すると共に、公報SDI調査を受託するサービスも提供しております。長きにわたる特許調査の実務経験を踏まえ、公報SDI調査を円滑に行う知恵を結集して、公報SDI調査にあたらせていただきます。生成AIでできる公報上の記載(テキストデータ)ベースの分類だけでなく、クレームタイプや構成・位置づけなど、依頼主様の事情に合わせた分類・仕分けにも対応いたします。公報SDI調査の納品物を受け取られたお客様は、フラグの付された公報と、念のため適宜サンプリングした公報をチェック(当社とのダブルチェック)していただくだけで済みますから、複数の作業者の進捗管理や結果整理の手間から解放されます。▼公報SDI調査で見つかった注目特許については、ウォッチネットTMの形式に整理して納品することも可能です。そうすると、そこから引き続き経過SDIのウォッチングを行い、貴社にとって障害となる特許が許可されそうになった場合の情報提供(刊行物提出)を計画的に行うことができますます。